最後のアーノンクールを聴く
24日、NHKホールにて。80歳を超えられた巨匠最後の来日とうことなのだが、バッハのロ短調という願ってもない曲目であった。2日後にもサントリーホールで同曲が演奏される。オケのコンツェントゥス・ムジクス、合唱のアルノルト・シェーンベルク合唱団とも大きな編成ではないけれどもNHKホールが大きすぎることはない。十分に美しい響きを聴くことができた。こと声楽作品を聴くには真横やステージ後方の席ではその真価を汲み取ることは難しいのである。
 開演前に評論家による解説があり、前半のバスのアリアにオリジナルのコルノ・ダ・カッチャ(もちろん復元したもの)が使われるという話があった。録音では聴いた経験があるものの見るのは初めて、これも楽しみになる。
 氏の最新盤であるブラームスのドイツ・レクィエムを聴いて感じたのだが、明らかに合唱を中心に演奏が組み立てられており、本日のロ短調もそれと同様のスタンスのように思えた。それは合唱のシェーンベルク合唱団が素晴らしいことも影響しているのであろう。わたしはアーノンクールの同曲の録音を聴いたことがなかったのだが、今日の演奏では合唱の一部分を独唱者に振り分けて歌わせるということをしていた(例えば最初のキリエの冒頭の長い序奏のあとの歌いだしの部分など)。その数は決して多くはないのだがとても効果的だった。わくわくしながら聴いていたものだ。
 ソリストに不足はなかったが、アルトのフィンクのアニュスデイはとびきり素晴らしかった。幸いこの公演は放送される予定でまた聴けるのである。オケも良い。特にバイオリンが人数の少なさを感じさせない豊かで美しい音。それが時にはものすごいアクセントとなるような演奏を聴かせニヤリとさせられた。弦楽器と管楽器を舞台の左右に配置する特異な配置も意外にバランスが良かった。
 演奏前にアナウンスがあり、拍手のタイミングは不自然に遅らされたものの、いざ拍手が起こると大変な賞賛と化した。カーテンコールは幾度も繰り返されたのだが最後までアーノンクールは一人で登場することなく、ソリスト、合唱指揮者とともに登場。聴衆はやっぱり一人で登場して欲しいと不満だった感じなのだが、最後にはこちらの方が折れて大拍手で送ったのだった。


 

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