タリススコラーズ演奏会

　紀尾井ホールにて。ピーター・フィリップス率いるタリススコラーズはちょくちょく来てくれる。けれどももちろんビクトリアのレクィエムを毎回やってくれるわけではない。過去にも日本で演奏しているみたいだが私は初めての機会。聴き逃せない。コンサートは「イギリスとスペインの音楽」と題され、前半をイギリスもの後半はビクトリアのレクィエム一曲という構成だった。初めて生で聴くタリススコラーズはまずバードの「天が喜び」で始まったのだが、力強く快活な歌いぶりにまず驚き！録音で聴く静的で緻密な感じとは随分違うから。タヴァナー、シェッパードと曲は続くが元気の良い歌は変わらない。初めてその名を聞くパーソンズのアヴェマリアがとても美しかった。
　今日の席は舞台から5列目の右側。扇形に並ぶコーラスとはソプラノ陣の声がダイレクトに届く感じになる。それで感じたのは、ソプラノは透明感のあるような声質ではなく、強くて少し個性的な音色をもっていること。とは言えアンサンブルでは良く溶け合うから問題ないし、一方、旋律では独特の存在感を示すことができる。最近の彼らのCDを聴いていないのでわからないのだが、昔の録音などと印象が異なるのはそのせいなのか。けれども、音だけではなく、後半のビクトリアにおいてもテンポなどは録音とは大分違う。
　実演はとても速いテンポを取る。先ほど10年前の演奏会評を調べてみたらまったく同じようなことが書かれていた。思うに会場の音響の事情ということもあるかも知れない。紀尾井ホールはややデッドなホールなので（残響などはまったく足りない）そうせざるを得なかったのではと。けれども今日のビクトリアはそれはそれで良い演奏だった。曲が曲だけにハズレはない。フィリップスの指揮はこれまでテレビでは見ているが、それは複雑な振り方をする。私だったらとても歌えないと思った。確かに曲自体複雑なハーモニーで書かれているところもあるにはある。アンコールは定番のロッティの「十字架にかけれれて」。最後までよく鳴らしてお開きとなった。