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準・メルクルの指揮。ベートーベンのミサ・ソレムニス。第九交響曲と並ぶ声楽大作だが、当然のことながらこちらの方が演奏会で取り上げられる機会はずっと少ない。生で聴くのは二十年振りくらいになるか知ら。まずメルクルの指揮が素晴らしい。合唱のコントロールが巧みで、オケとのバランスが文句なしだった。オペラにしっかりと腰をすえて指揮活動をしている証拠だろう。ゆっくりとしたテンポで、豊かな響きに貫かれたキリエから、引き締まったグローリア(それでいて決して速過ぎない)へつなぐところなど実に的確だ。唯一の不満はサンクトゥスで、通常合唱で歌われるべきところをすべてソリストに受け持たせたことである。確かにサンクトゥスの静かな導入部と、それに続く激しい合唱は対比が大きすぎる感があり、演奏が難しいところではあるのだが、メルクルこそそこを見事に解決してくれたはずだと思うのだけれど。本日のコンマスは堀さん。ベネディクトゥスのソロはこれまた上手すぎる。楽器がいいのかな。国立音楽大学の合唱はソプラノの音色に失望した。オケとのトゥッティでは楽器の倍音等に助けられてそれほど目立たないのだが、合唱だけが浮かび上がるような部分では、まるで中学生の合唱団のようなうすっぺらな歌声が顔を出して頭を抱えた。その合唱の指揮者は田中先生。お元気そうなお姿を拝見してメルクルの指揮と共に二重の幸せを味わったのである。
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